ジュディ・オングの飲茶のあとで 
朝日新聞 土曜夕刊 ウイークエンド経済 2002年1月5日掲載(第1回)

言えますか「それもありね」
言えますか「それもありね」
 

 明けましておめでとうございます。今年こそ穏やかな年になりますようにと願いながら、この欄を担当します。飲茶(ヤムチャ)のあとの雑談のように、リラックスしておつき合い下さい。
 あのテロ事件からもう4ヶ月です。異なる文化、違う宗教、別の民族…。21世紀の初めに、世界は様々な摩擦を抱えています。でも私は、そのほとんどは互いを知ることで解消できる、と信じています。未知の価値観や慣習に接したとき、「ああ、それもありね」と言えるかどうか。ここが分かれ道です。 
 私にはイスラム教徒の友人がたくさんいます。ラマダン(断食月)は宗教行事ですが、臓器を休める、ひもじさを知って思いやりの心を養うなど、合理的な意味があるそうです。ここで「なるほど」と思えるかどうかです。
 日本ではおはしを横向きで置きますが、中国では縦に置きます。どちらが正しいというものではありません。それもあり、なんです。
 谷村新司さんたちと参加したタイのコンサートで、終演後に王族の方にごあいさつしていた時です。共演した地元の有名歌手が突然倒れました。緊張のあまり貧血を起したかと慌てました。でも、彼女は倒れたのではなく、正式な作法でひれ伏したんですね。バレエのひん死の白鳥のような美しいポーズでした。
 アメーバから多細胞生物になった人類が5大陸に分かれ、それぞれの気候風土の中で何万年も生きてきた。違うのが当たり前ですよね。百人一首の子供たちのように、その違いに素直に驚き、そして受け入れたいものです。


※朝日新聞夕刊2002年1月5日付ウイークエンド経済より
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